社畜ライターのチラ裏

社畜ライターが仕事から離れて好き勝手に書くブログ。

路線図を眺めていると職質される。

大学生の頃だ。学校もバイトもないある日、一日家にいても退屈だったので渋谷に出てきていた。特に渋谷に用事があったわけでもなく、適当にぶらついていた。しかし、田舎者のオタクには渋谷という街は眩しすぎる。楽しもうにもオタクにとっては、アニメイト以外なにもないも同然の街だった。いや、けいおんが流行っていた頃だったはずだから楽器屋も少し覗いていた気がする。買い物をしたことはないが。

 

当て所なく彷徨っていた僕だったが、どうせ街に出てきたのだし山手線にでも乗って適当にどこかへ行こうと思い立った。やはりアキバか。池袋というところもあるな。他の駅はよくわからん。などと考えながら駅の路線図を眺めていた。そのときだった。トントンと肩を叩かれたので振り向くと、男性がふたり立っていた。そして胸元からなにか黒い手帳のようなものを取り出すと、「警察だ、身分を証明できるものある?」と聞かれた。

 

この時の気持ちは、なんとも形容しがたく、そしていつまでも忘れられない。初めて職質を受けたのだが、その時の僕は職質だということにも気がついていなかった。ただでさえコミュ障気味なのに、突然見ず知らずの男二人に声をかけられたうえ、警察だという。正直困惑していた。

 

僕は今も昔も免許の類を持っていないので、カバンに常に入れていた学生証を見せた。なんだろう。なにか事件だろうか。それとも僕が2ちゃんねらーの言うことを間に受けてバイトをバックれて辞めたのを通報されたのか。なんだよ、バックれたっていいだろ。毎日ケータイが鳴るのが辛かったんだよ。なんだよ、毎日のように「明日早く来れる?」「明後日遅くまで残れる?」って聞かれるんだぞ。ノイローゼになるわい。バックれたっていいじゃないか。

 

そんなことはどうでもいい。問題はそのあとだったのだ。僕の学生証を見た男の言葉が問題だ。「あ、日本の方?」

 

は?お?あーん?なんじゃわれ、俺が何人に見えたっつーんだ、おーん?日本人オブ日本人じゃい。てめー俺がベッカムにでも見えたってーのかよ。それなら嬉しいな。でもそうじゃないんだろ、ブサイクすぎて何人かわからなかったとか言うんだろ。失礼なやつめ。ていうかその手帳本物か?本当に本物なのか?こっちは確認する術もないのに、チラッと見せるだけで全面的に信用しろってのか。そりゃ無理な相談じゃろがい。

 

これくらいの感情が湧き出たし、今でもこのことを思い出すと憤りを感じる。人に横柄な態度で話しかけておいて、僕のアイデンティティすら揺るがすようなことを平気で言うのだ。そりゃあ、いい気持ちはしない。

 

いえね、国籍差別しようとかそういうことじゃないんです。たとえば僕の顔が日本人に見えようが、中国人に見えようが、アメリカ人だろうがイギリス人だろうがエジプトでもサモアでもセントクリストファーネビスでもなんでもいいんですよ。見た目ってのは画一的じゃないから、そういう風に見える人もいておかしくないでしょう。みんな違ってみんな良い。それで良いんです。でもね、いきなりそれを本人に不躾にぶつけるのはどうかと思うんですよ。普通言います?あなたはあなたらしく見えませんねって。

 

それくらいモヤモヤしながらも、僕は優等生オブ優等生なので「はい」とだけ答えたんですよ。そしたら向こうは、「じゃあいいです」みたいな態度と言葉を残して立ち去ったんですよ。なんで声をかけたかも言わず。

 

これもうブチギレ案件ですよ。なんかまるで、僕が外国人犯罪者みたいな扱いじゃないですか。人のアイデンティティを揺るがすだけでは飽き足らず、犯罪者扱いしてたんですよ。ただ路線図を眺めてただけで。なんだっていうんですか。ブサイクは罪ですか。それとも路線図を見るのは覗きかなにかと同義なんですか。

 

警察が頑張ってるのはわかってるんですよ。毎日のように大きなものから小さなものまで事件が起こる。その真相を解明し、解決に導くために日夜命を張って頑張ってる。それはわかる。でも、だからって人の上の立場というわけじゃないでしょう。僕ら一般庶民は、警察に守ってもらう。警察は時に、一般庶民から情報を貰う。それって対等なはずじゃないですか。それなのに、なんか偉そうなの、僕は嫌だなって思っちゃいます。

 

そんな僕の好きなテレビ番組は警察24時です。よろしくお願いいたします。